多くの現代人が憧れる「田舎でのスローライフ」
効率やスピードを重視して仕事や生活することが当たり前となっている現代社会。スローライフとは、それとは逆で、のんびりと過ごしながら人生を楽しみ、生活の質を高めようとすることです。
日本でスローライフという言葉が使用されるようになったのは2001年頃のこと。「ゆっくり、ゆったり、心豊かに」を掲げるスローライフ・ジャパンが設立され、環境問題への関心の高さもあったことから、スローフード、スローライフ、ロハスなどの言葉が広まっていきました。
スローライフを田舎に求める理由とは?
住み慣れた便利な生活環境を離れて田舎に移住する理由とはどのようなものがあるのでしょう。
スローライフは、不便さを楽しむ生活と言っても過言ではありません。子どものために空気がキレイで自然を満喫できる環境に移住したいと考える人もいれば、小さくても良いから自分の農園を作りたいと夢を描いている人もいるでしょう。また、若い頃はバリバリと働いてきたので、定年後はゆっくり、のんびり、自分の趣味と向き合いながら田舎でのスローライフを望む人もいますよね。
人によって、田舎にスローライフを求める考え方には違いがありますが、やはり一番の要因は緑豊かな自然環境でしょう。
田舎でのスローライフに挫折して都会へ戻る人も多い
田舎に対するイメージにはどのようなものがあるでしょうか?山や田んぼに囲まれているような村や、小川が流れている空気の澄んだ場所でしょうか。高層ビルなどひとつもない、周りの風景が遠くまで見渡せる広大な景色を思い浮かべる人もいるかも知れません。
田舎に対する理想が大きすぎると、現実とのギャップがあることに気が付いた時、自分が過ごしてきた生活環境とあまりにも違うことから田舎でのスローライフ生活を挫折してしまう可能性もあります。
田舎にも様々な環境がある
「田舎」と言っても、実は地域や規模によって様々な環境があるものです。
例えば、コンビニやスーパーはなく、生活用品は週に1~2回郊外に買い物に行かなければ手に入らないような地域があったり、大きな病院がない為、病気になった場合は周辺の市町村までわざわざ出向かわなければならない地域もあります。
海の近くの漁村や、牧場などのある地域、また、夏は涼しくて過ごしやすい反面、冬になると積雪量が多すぎて自宅を出るだけでも大変な地域もあります。
他にも、生活には全く困らない中規模都市の田舎もあるので、スローライフを求めて田舎に行きたいのなら、どのような環境なのかを良く調べたほうが良いでしょう。
田舎でのスローライフの失敗談
憧れていた田舎でのスローライフを始めてはみたものの、理想と現実のギャップに耐え切れなくて都会に戻ってしまった人や、田舎暮らしを軽く考えすぎていたことに後悔している人のケースをご紹介しましょう。
➀大分県に移住したAさん 60代
以前から憧れていた古民家を購入。しかし隙間風が多く、思っていた以上に暖房費用がかかり、改修工事の必要性を改めて実感します。
また、腰痛持ちのAさんは以前から興味を持っていた農作業をして持病が悪化。整骨院に通いたいのに家の近くにはないので、遠くの町まで車で行かなければならないのが悩みの種に。
②長野県に移住したBさん 20代
テレビで紹介されていたスローライフに憧れて田舎暮らしをスタートしましたが、すぐに見つかると思っていた仕事がなかなか見つからず、しかも給料の安さに驚くことに。近くにハローワークもないので、しばらくは貯金を崩して生活費にするはめになりました。
③岐阜県に移住したCさん 70代
都内で自営業をしていたCさんは、奥さんに先立たれたことをきっかけに生まれ故郷である岐阜県への移住を決めます。しかし、10代の頃に東京へ出てきたCさんは、想像以上に地域に溶け込むことが出来ません。外へ飲みに行くのが好きなCさんですが、田舎では自宅で飲む人の方が多く、外に出ても人が少なくて面白くないことを実感します。結局は、1年半で購入した一戸建てを売り払い、東京に戻ることに。
知っておきたい、田舎でのスローライフの現実とは
田舎でのメリットは後ほどお話しするので、まずはデメリットについてお話しておきましょう。憧れの田舎でのスローライフを目指すのなら、デメリットを知ったうえで移住を考えたほうが良いですよ。
田舎でのスローライフの現実➀交通機関が不便
田舎に住むのなら、車は必需品です。1人1台マイカーを所有しているのが普通です。車が運転できなければ、どこにも出かけられないと思ったほうが良いでしょう。もちろん、近くに行くだけなら自転車に乗る事が出来ます。
しかし、バスや電車などの公共の交通機関となると話は別です。1時間に1本あれば良い方で、自分の行きたい場所まで直行で行ってくれるとは限りません。しかも、自宅からバス停や駅までの距離も遠い場合が多いのです。
都会のように常に道路にタクシーが流れてはいないので、タクシーに乗りたい場合は電話をかけて自分のいる場所まで来てもらわなければいけないことも頭に入れておきましょう。
田舎でのスローライフの現実②動物に注意が必要
田舎の道路標識に「クマに注意」「鹿に注意」などがあるのですが、見たことはあるでしょうか。場所によっては、猿であったり、イノシシの場合もあります。他にもヤマネコや馬、カニなど地域によって生き物の種類も異なってきます。道路に飛び出してくる危険性もさることながら、畑などを荒らされたりする被害も実際に起きています。
また、ヘビやもぐらなど、都会では考えられないような生き物を見かけることもあるでしょう。
田舎でのスローライフの現実③娯楽が少ない
田舎でのスローライフ生活を望む人にとって、娯楽施設はいらないという意見が多いかも知れません。しかし、映画館もなければ、マクドナルドなどのファストフード店もない地域もあり、自動販売機ですらない場所さえあるのです。
もし、現在住んでいる場所が便利な生活環境であるのなら、そのような田舎での生活が最初の1週間くらいは新鮮さを味わうことが出来たとしても、次第に不便さの方が気になってくる可能性もあることを頭に入れておいたほうが良いでしょう。
田舎でのスローライフの現実④テレビの放送局が少ない
テレビの放送チャンネルは、地方によってチャンネル数も番組の時間帯にも差があることをご存知でしょうか。例えば、地上波のチャンネルで東京では当たり前のように放送されているテレビ東京、TOKYO MXなどは地方では放送されていません。NHKはどこでも視聴できますが、、都道府県によっては民放テレビ局の数が1つしかないところさえもあります。
【都道府県の民放テレビの局数】
- 6局:東京、神奈川、千葉、埼玉、群馬、栃木
- 5局:北海道、茨城、愛知、三重、岐阜、志賀、京都、奈良、大阪、和歌山、兵庫、岡山、香川、福岡
- :岩手、宮城、福島、山形、新潟、長野、静岡、石川、広島、長崎、熊本、鹿児島
- 3局:青森、秋田、富山、鳥取、島根、高知、山口、大分、沖縄
- 2局:山梨、福井、宮崎
- 1局:徳島、佐賀
もちろん、田舎でのスローライフにはメリットもたくさんある
田舎でのデメリットについてお話してきましたが、もちろん田舎ならではのメリットもたくさんあります。今度は、都会では味わえないようなメリットについてお話していきましょう。
田舎でのスローライフのメリット➀通勤ラッシュや交通渋滞が少ない
都会でのストレスの1つに満員電車などの通勤ラッシュがあります。また、交通渋滞もイライラの原因になることも多いですよね。田舎暮らしのメリットの最大の魅力は、そのようなストレスがないことです。通勤時間帯は、多少の混雑がある地域もありますが、殆どの時間帯が交通渋滞はないと考えたほうが良いでしょう。
田舎でのスローライフのメリット②人との繋がりを感じられる
近所付き合いなどは、人によってはストレスを受けてしまう場合もありますが、周囲にどんな人が住んでいるのかを知っていると安心感があるものです。しかし、このような制度になかなか馴染めないというケースがあるのも事実です。子どもがいる夫婦の場合は、近所の人たちに見守られながら子育てが出来る環境を作ることが出来ます。適度な近所づきあいは、田舎でのスローライフを送りたいのなら必要不可欠だと考えたほうが良いでしょう。ただ、田舎でのスローライフには興味があるけれど、人付き合いが苦手な場合は、軽井沢や伊豆、那須高原などの別荘地を考えてみるのも良いかも知れません。
田舎でのスローライフのメリット③自宅で野菜が栽培できる
自給自足に憧れて、田舎でのスローライフを送りたいと考えている方が多いのではないでしょうか。実際に田舎に住んでいる人達は、自宅の庭に小さな畑を持っているケースが多いです。スーパーに行かなくても、茄子やトマト、キュウリ、ピーマン、カボチャなどが簡単に自宅の庭で栽培出来るのが魅力です。食べたい時に、新鮮でおいしい野菜をたくさん食べられるなんて嬉しいですよね。
他にも、漁村に住めば新鮮な魚を味わうことが出来ますし、ラーメンが有名な地方だったり、こだわりのあるジャムやスイーツなどの新商品を開発している村も魅力的です。とにかく食べ物が新鮮でおいしいのが田舎に住む魅力の1つでしょう。
田舎でのスローライフのメリット④行政支援を行っている市町村もある
田舎に住むのなら、新築や中古の家を購入したい!と考えている方が多いことでしょう。農村地域などへ都会から移住する場合、実家に帰るUターンと、親戚もいなければ縁もゆかりもない田舎へ移住するIターンがあります。これらのUターン、Iターンを希望する方のために、市町村によっては家を購入する際の補助金を出してくれたり、家賃補助として月額決まった金額を数年間も支給してくれるところもあります。各市町村のHPなどで情報をチェックしておくと、田舎でのスローライフを過ごしやすくなるのではないでしょうか。
田舎でスローライフを送るならじっくりと調べることが大事
ここまで田舎でのスローライフについて、メリット・デメリットなどをお話してきました。
不便さを楽しむのが田舎暮らしの基本です。田舎へ移住を考えているのなら、まずは「田舎暮らし体験ツアー」を企画している所を調べたり、貸別荘などにロングステイするのもおすすめですよ。
憧れの田舎でスローライフをするために、行きたい地方の情報はできるだけたくさん集めて調べておきましょう。そのうえで、自分に合っていると思われる田舎へ、まずは短期間で出かけてみてはいかがでしょうか。