日本人の8割以上が苦しむ機能不全家族の特徴
日頃「毒親」という言葉で語られることが多くなった「機能不全家族」。これは、アルコールや薬物、ギャンブル、暴力やセックスなどの依存症、育児放棄やゴミ屋敷化など、さまざまなネグレクトの問題を抱えた親(毒親)がいる家族のことです。
驚くことに、日本では8割以上の家庭が「機能不全家族」で、家族が本来の家庭としての役割を果たしていないのだそうです。この事実は、アダルトチルドレンやDV問題に精通する臨床心理学博士の西尾和美さんによって提唱され、著書『機能不全家族-「親」になりきれない親たち』(1999年、講談社刊)に書かれています。
8割の機能不全家族育ちを苦しめる「毒親」の存在
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子供の人生において、機能不全家族である毒親の存在感は圧倒的です。なぜなら子供は一人で生きて行くことができないので、毒親がどんなに不条理なことを押し付けても、生きていくめにはそれを受け入れざるを得ないからです。
あなたも覚えがありませんか。テストで百点を取らないと不機嫌になる親。一流大学、一流企業に入れないなら人間的な価値がないという親の態度は、情緒的脅迫の原型です。
「子供は親の言うことだけ聞いていればいい。生んでやったのに親に意見するな」
「親の介護は子供の責任」
「産んで育ててやったんだから、親に恩返しするのは当たり前」
「お前なんか生まなきゃよかった」
さまざまな毒のある言葉が子供の心を傷つけますが、それでも親を喜ばせたい、愛されたいという欲求から応え続け、結局は毒親に反発しながらも、支配された人生を歩むことになっているのです。このような重い生きづらさを抱える人が、日本では8割を超えているのは驚異ですよね。
日本の8割以上を占める機能不全家族・毒親の特徴
毒親。特に母親が毒親化すると、子供は常に、母親の有害な批判や否定を受けながら育つことになります。毒親の愛情のない心、条件付きの愛、すさんだ環境は子供に大きな傷を残します。
日本で8割以上を占めると言われる機能不全家族とは以下のような家庭です。
- 両親の仲が悪く、常に夫婦喧嘩している
- 親の浮気や不倫の発覚などの修羅場を見せられる
- 祖父母と両親の仲が悪く、常にいがみ合っている
- 精神的、身体的、精神的な虐待や放置
- 子供に対する厳しいしつけと人格否定
- 兄弟(姉妹)や優秀な子供との比較
- 親から課せられるあまりにも大きすぎる期待
- 家族の誰かがいつも病気がちな不健全な状態
- 外には愛想よく、家族には厳しい。
- 父親と母親の言うことや指示が違い、どちらをやっても否定される
- 窒息するほど溺愛されるか、まったく無関心で放置される
- ゴミ屋敷のような家庭環境に置かれる
- 育児放棄、いつも親が不在
こういった家族の中で育つと、子供はほぼ自己肯定感を失ってしまいます。そして、人を疑ったり、他人の好意を受け入れられなくなることが多いようです。あるいはその逆で、他人が自分から離れて行くのが怖くて、必用以上に尽くしたり、世話を焼いたり執着したりを繰り返すことも少なくありません。他人との距離感がうまく取れず、生きづらさが生じてくるのです。
「子供時代の思い出は、両親が夫婦喧嘩をしていることしかありません。いつも喧嘩を止めようとして私も怒鳴られ、ひどい言葉で否定されてきました。社会に出ても、大声を出す人が怖いです。できれば人と関わりたくない。些細なことでも心が前を向くのにひどく時間がかかります」
(40歳・女性)
「幼い頃から母親の過干渉がすごかったです。彼女はずっと優等生で過ごしてきた人。テストや図画工作、音楽まですべて「私の子供ならできるはずだ」と過剰に期待され、常に優等生の母と比較され、何をやってもダメだと刷り込まれてつらかった」
(33歳・女性)
なぜ日本人に8割以上もの機能不全家族がいるのか?
それにしても、なぜ日本人の8割以上が機能不全家族などという状態になってしまったのでしょう。前述の臨床心理学博士の西尾和美さんがその理由を以下のように説明しています。
- 日本人は世間や周囲の人の目を気にする習性があること
- 他人や相手の世話にのめりこみ、自分を見失ってしまう共依存や特殊な人間関係を、逆に美徳とする社会構造であること
- 育った家庭や学校、職場で「健全な人生のあり方」や「コミュニケーション術」、「人間関係の持ち方」を教える場が極端に少ないこと
確かに、これでは8割以上の機能不全家族がいても仕方ありません。苦しい日本の現状が見えてきます。
生きづらさを抱えるアダルトチルドレンたち
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親に評価されることだけを最優先し生きてきた子供のことを、心理学用語でアダルトチルドレンと呼ばれます。アダルトチルドレンは、自分のことを肯定できないまま結婚し、自信がないまま家庭を築き、いつの間にか毒親と同じ子育てをしていると気づき、苦しみます。
毒親育ちのアダルトチルドレンは、自分の心の傷を癒さない限り、子供を産んだ時に次の世代に再び不健全なコミュニケーションや人間関係、思考、行動を伝え続けてしまうことが多いと西尾先生は警鐘を鳴らしています。
アダルトチルドレンが幸せになるためには、毒親に痛めつけられた心の傷を癒すことが最優先です。生きづらさを解消するためには、負の連鎖を断ち切り、積極的に自分を愛して守る手段を考えていくことが大切です。
あなたは大丈夫?日本人の8割が陥る機能不全家族。
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毒親に育てられた人の特徴は?
毒親に育てられ、心の痛みを抱えたままで生きづらさを感じている日本人。
一般的にアダルトチルドレンの特徴は以下のものが挙げられます。あなたはどうですか。
- 常に毒親や他人の賛同、称賛を必要とする
- 自分の判断に確固とした自信がもてない
- 敏感で傷つきやすく、ひきこもりがちになる
- 罪悪感を持ちやすく、自罰的あるいは自虐的である
- 物事にのめり込みやすく、他人の世話に熱中しやすい
- 恋愛では甘え下手で相手に過剰に尽くして失敗する
- 孤独感や自己疎外感がつきまとう
- 集中力や継続力がなく物事を最後までやり遂げられない
- 言い訳や建前なども含め、習慣的に嘘をついてしまう
- 他人にべったりと依存的か、逆に相手をコントロールしようとする
- 感情の波が激しく、怒りや悲しみなどの強い感情に過剰反応する
- 何をしてもリラックスできず、ずっとモヤモヤした不安感を抱えている
- 悲観的で負の感情に取りつかれやすい
「私の場合は、自分ががんばって学業や仕事に打ち込み始めると、母親は自分から離れるのを恐れ、仮病を使って勉強や仕事をやめて自分の面倒を見るようにと言う人でした。期待をかけておいて、それらをすべてダメにされる。母が死ぬまではまるで呪いのような人生でした」
(51歳・女性)
「母は何事も曲解して悪い方に取り、喧嘩をふっかけてくる人でした。実家の息苦しさ、罪悪感とか無力感、怒り、憎しみがごちゃごちゃになった空気が本当につらかった。県外の専門学校に入ってからは、一切家に帰らず連絡もしなかった。親との距離ができるだけで、ホッとして身も心も軽く感じる」
(36歳・女性)
恋愛にも影響する機能不全家族
機能不全家族は、子供に対して愛情を「親の期待を満たす条件付きでしか与えない」ため、子供は自己肯定感が低いままで大人になります。そのため、アダルトチルドレンは恋愛でも自分をわざわざ不幸にすることが少なくありません。
人間関係に少しでもつまずいたり、報われない出来事があると、「どうせ自分は何をやってもうまくいかない」と思いがち。毒親に刷り込まれたネガティブな言葉がリフレインして前に進めなくなることもあるでしょう。精神的にこんなにつらい思いをしている人が日本には8割以上いるのは由々しいことです。
例えばこんな恋愛パターンに陥っているなら、注意が必要です。
- 恋人に甘えるのが苦手で、尽くしすぎたり、世話を焼きたくなる
- うまくいっているにも関わらず、恋人に振られたらどうしようという強迫観念が拭えない
- ギャンブル、酒乱、DVなど人間的、性格的に問題がある男ばかりを好きになる
- 好きな人ができても「私なんかどうせ愛されない」とあきらめてしまう
- 相手から告白されると「からかわれている」と感じ拒絶してしまう
機能不全家族に育ち特有の結婚や子育ての強い不安
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機能不全家族の中で育つと、恋愛に恐れを抱いてしまったり、結婚なんて自分には向かないと諦めてしまうことが少なくありません。また、結婚しても子供を持たないと決める人も多いようです。毒親に育てられ、あまりにもつらい子供時代だったため、子供を産んで自分と同じ想いをさせたくないというのが理由です。
しかし機能不全家族で育っても、毒親から距離を取り、心の傷を癒すことができれば、幸せな恋愛や結婚生活を送ることは可能です。もちろん、子育てだってちゃんとできるので心配はいりません。自分のつらい子供時代を反面教師として、どんな状況にあっても自分が子供のいちばんの味方になると決め、幸せに子育てをしている人も多いのです。日本で8割以上いるアダルトチルドレンたちは、それぞれに負の連鎖を断ち切り、幸せをつかむ方法を探しているのです。
生きづらさを楽にする5つの方法
機能不全家族の中で育つと、自己肯定感や自尊心が低いため、「自分自身のことがよくわからない」「自分をどうやって愛せばいいのかわからない」という人が少なくありません。
あなたの心を、まだ毒親が支配しているならば、そっと距離を置き、自分のために生きる許可を出しましょう。幼少期のつらい記憶や、刷り込まれた毒親の「呪縛」を解き、自分の人生を楽しむと決めましょう。毒親、機能不全家族に育てられた人、そしてそこから抜け出した人からのアドバイスをもとに、アダルトチルドレン特有の「生きづらさを楽にする7つの方法」をまとめてみましたので、参考にしてみてください。
①物事に過剰に巻き込まれないこと
機能不全家族に育てられると、大人になっても身近なところで喧嘩やトラブルが起こると、自分に関係のないことでも、まるで自分が原因であるような錯覚をしてしまうことがあるものです。それを忘れずに客観性を保ち、自分に関係のない事に口をはさまない、過剰に巻き込まれないことを心がけると楽になります。また、喧嘩やトラブルの場所からはそっと距離を取るのも良いでしょう。
②行動の基準を「愛」に決めること
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機能不全家族の中で育つと、何かに過剰にのめり込んだり、誰かに過剰に尽くしたりしがちです。そうならないために、自分の行動の基準を「愛」に決めましょう。
例えば、行動基準が「相手の機嫌取りのため」なら、それは「愛」ではありません。
執着したり、依存したりするのも愛ではありません。本当は愛していないのに、相手に尽くしたり、偽善を働くのは負の連鎖に陥っている時です。あなたの心が安らいでいるか、愛に満ちているか、それを常に自分に問いかけてみて。
③うまくいかない家族関係から距離をとること
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機能不全家族、毒親の支配下で育てられると、子供は「親は絶対的な存在」だと刷り込まれるものです。そして、どんなに虐げられても、愛をもらえなくとも、
「世界でたったひとつの家族だから面倒を見るべき」「自分を生んでくれた親だから何をされても大事にするべき」
と、責任感で自分をがんじがらめにしがちです。無理なものは無理で良いのです。これがすべての生きづらさの原因となっていると気づきましょう。
自分に有害な毒親からは距離をとり、極端な思い入れや責任感で巻き込まれないよう心がけて。
④過去にとらわれる時間を減らすこと
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過去にとらわれる時間を減らしていきましょう。敏感で、緊張しすぎの毎日なら、リラックスすることです。感情的になったり、精神的に辛くなったら、自分のいちばん落ち着く場所で静かに時間を過ごすようにしましょう。過去の辛い記憶が暗雲のように心に湧いてきたら、自分自身を大切にし、あなたが1番幸せだと思うことをしたり考えたりして、実践していきましょう。先のことを考えすぎず、自分の中に抱えている罪悪感を捨て、自由になることです。あなたの人生はあなただけのものです。
⑤嫌な気分から抜け出す方法を探すこと
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あなたの好きなこと、ご機嫌な気持ちになること、楽しいことをノートに片っ端から書きつけて行きましょう。嫌な気分になったとき、そこから抜け出す方法をたくさんみつけておきましょう。趣味に熱中したり、楽しいことを考えることで嫌な気分から遠ざかることです。もちろん、嫌な気分が湧いてきてコントロールできないこともあるでしょう。そんなときは「そりゃそうだよね、わかるよ。こういう時期もあるよね」と、自分を肯定し受け入れることです。そうすることで、心の負担はぐっと軽くなるはずです。
機能不全家族の負の連鎖を断ち、幸せになろう
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仕事、人間関係、恋愛。機能不全家族の中で育つといろいろなことに、自信がななくつらいものですよね。しかし、「どうせうまくいかない」という暗い気持ちにとらわれたら、「そんなことない、私の人生は私のものだから」と言い聞かせて、前を向いて行きましょう。