
ラオスの治安の基本情報
世界平和度指数ランキングでは、ラオスは163カ国中43位です。
このランキングは暴力、犯罪、軍事費、戦争を基準に決めています。
肌感覚としては、ラオスの順位はもう少し上に思えるのですが、反政府勢力の存在がランクを下げているのかもしれません。
世界平和度指数 (Global Peace Index)
http://visionofhumanity.org/app/uploads/2019/06/GPI-2019web003.pdf
ラオスは穏やかな国民性と豊かな自然で訪れる人を癒してくれます。
一方、急激な経済成長と貧富格差の拡大にともなって治安が悪化しています。
今回は、ラオスの治安の良さとそれを支える文化的背景、近年における変化、旅行するときの注意点について、ご紹介します。
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ラオスは基本的に治安が良い国
ラオスの治安が良いのは国民が小乗仏教の敬虔な信徒だから

ラオスに来て感じるのは浮浪者をあまり見かけないということです。
かつて旅した東南アジア、南アジア、中米などの国々と比べても、路上生活者は格段に少ないし、スラムもありません。
これは主要民族のラオ族を中心に国民の多くが敬虔な仏教徒だということと深い関わりがあります。
「財を一人で貪ってはいけない、貧しい人と分かち合って徳を積むことで悟りが開ける」
こうした仏教の教えをラオス人は大切にしています。
物や金銭を受け取る側も相手が徳を積む手助けをしているのだから、遠慮なく受け取ります。
家族、親戚、友人、ご近所とその関係性に応じて、金銭や物品を都合し合います。
あるいは医療・進学・ビジネスその他もろもろの機会獲得について助け合い融通しあいます。
こうした受け皿によって、路上生活者や犯罪者に陥ることを免れる人も多くいます。
ラオスの治安が良いのは相互監視制度が整っているから

ラオス人に秘密はないと言った友人がいました。
日本ではプライベートな話題は避けますが、ラオスではどんなことでもすぐに広がってしまいます。
夫婦関係、子どもの進学、就職、給料など、友人・親戚の間ではあけっぴろげに伝えあい、大きな運命共同体を作り上げています。
このような関係性は犯罪行動の抑止力としても働きます。
ラオスでは都市部でも市・区の下に500人~1000人単位で村役場が設けられ、5年任期の村長さんが住民の選挙で選ばれます。
村役場は青年同盟や女性同盟など各大衆組織に補助されながら、住民の暮らしの奥深くに入り込み、サポート・管理・監視します。
外部から不審者が入り込んだらすぐにマークされるので、犯罪者や犯罪組織がアジトを作るのは難しいと思います。
ビエンチャンでは区ごとに人民軍の駐屯所が設けられ、いつでも軍隊が出動できる準備が整っています。
駐屯所から各村役場に一人ずつ連絡係が派遣され、村で犯罪やトラブルが発生したら軍隊が鎮圧に向かいます。
このようにラオスでは人間関係と組織が二重の輪で人々の行動を規範化し、犯罪を抑えています。
ラオスの治安が良いのは放し飼いの犬が活躍しているから

私たちが郊外に家を建て始めて最初にしたことは、番犬を飼うことでした。
ラオスでは市の中心部でも郊外でも多くの家で防犯のために2~3匹、多い家では5~6匹の犬を放し飼いにしています。
「睡魔に勝てない警備員や作動するかどうか分からないセキュリティシステムに頼るよりも、犬の縄張り本能のほうがよほど信頼できる」という考えが浸透しています。
飼われているとはいえ、犬はかなり自由に生活していて、自分の領土内に落ちている食べ物をくわえて歩いている姿をよくみかけます。
犬たちは、自分の縄張りに侵入してくる犬は容赦なく攻撃し、人間に対しては警戒の咆哮を浴びせます。
最近のラオスは治安が悪化してきている

ラオスの治安が悪化しているのは貧富の格差が拡大しているから
ラオスは産業が少なく、世界的にみると貧しい国です。
2018年の1人当たり名目GDPをみると、日本が世界33位で39,000ドルなのに対してラオスは154位で2,579ドルとなっています。
くわえて、ここ10年で急速に貧富の格差が広がっています。
ジニ係数は貧富の格差を示すデータです。0から1の数字で示され、値が大きいほど、その国の貧富の格差が大きいことになります。
2018年のデータによると日本のジニ係数は0.299で貧富格差の大きさは世界88位です。
12年前、2008年のラオスのジニ係数は0.367で貧富格差の大きさは世界83位でした。
世界のジニ係数 出典:地歴社
http://www.chirekisha.jp/234w.statistics.pdf
ところが2018年には0.411で貧富格差の大きさは世界32位になってしまいました。
2008年に比べると12年間で格差が大きく拡大していることがわかります。
ジニ係数
https://jp.knoema.com/atlas/topics/貧困/所得格差/GINI指数
ジニ係数を基準に考える社会騒乱多発の警戒ラインは、0.4と言われています。ラオスはすでに警戒ラインを超えてしまっているのです。
ラオスは産業が少ないため、サラリーマンになれるのはひと握りの人です。
しかし、必要物資の多くをタイや中国からの輸入に頼るため、物価はタイよりも若干高めです。くわえてグローバリズムやSNSの発達の影響で購買欲求は急速に高まっています。
貧しい、格差が激しい、購買欲求の高まり、低収入と犯罪が増加する構図が浮かび上がってきます。
ラオスの治安が悪化しているのは麻薬常習者が増えているから

ラオスには覚せい剤や大麻などの違法薬物が流通しています。
歴史的にはミャンマー、タイ、ラオス国境の「ゴールデントライアングル」で生産されたアヘンやヘロインが流通していたようですが、近年では合成麻薬に変わってきているようです。
ラオスでも麻薬撲滅のための取り組みは継続して行われており、取締も厳しさを増しています。2014年には麻薬を大量に所持していた外国人が逮捕され、死刑判決を受けたと発表されています。
ラオスの治安が悪化しているのは反政府武装勢力がいるから

ラオスが左派、右派、中立派に分かれて内戦状態にあった1963年後半、アメリカはラオス北部でモン族を中心に、特別ゲリラ部隊を編成しました。
特別部隊はアメリカの指示のもと内戦の終結まで共産軍と熾烈な戦いを繰り広げたのですが、戦いは1975年共産軍の勝利で終わります。
1976年~1977年にかけてモン族の元CIA秘密部隊のメンバーの中から生まれた反政府運動がビエンチャン北部のビア山を中心に猛威をふるいました。
しかし、反政府運動はベトナム・ラオス連合軍の猛攻撃を受け、同年のうちに失敗に終わります。このとき何千人ものモン族が命を落としています。
敗戦と反政府運動の失敗を経て、モン族は人口の三分の一が国を出てアメリカや日本に渡りました。
このときの流れで、ラオスではいまでもモン族による反政府活動が数年に一度息を吹き返し、旅行者やラオスの一般の人々が命を落としています。
事故や事件に巻き込まれないために気を付けたいこと
ラオスで行ってはいけない場所

(参照:外務省海外安全ホームページ)
上述の、反政府勢力による爆発事件、襲撃事件が年に数回発生しています。こうした事件のほとんどはビエンチャン北東部のサイソンブン県やシェンクワン県に集中しています。
シェンクワンには昨年世界遺産に登録されたジャール高原の巨大石壺遺跡など見所も多数あります。訪れる際はバスや車ではなく、飛行機を使ったほうが安全です。
2017年8月、ラオスとカンボジアの間で国境紛争が起きています。4-5ヶ月にわたって両国の政府軍が国境で対峙し、緊張は高まりまさに一触即発の状態でした。この時は両国の首相による話し合いで解決がなされ、武力衝突は避けられました。
こうした状況は国境封鎖にもつながるため、渡航前そしてビエンチャン到着後に関連の情報収集につとめ、危険なエリアには近づかないようにしましょう。