増加している職場での「ハラスメント」
実はあなたの職場にもある?様々なハラスメント
最近ではセクハラやパワハラに関するニュースを聞かない日はないほどに、「ハラスメント」という言葉は私たちにとっても身近なものになりました。これは決して、昔はハラスメントが無かったという訳ではなく、誰もなんとなく「イヤだな」「やめてほしいな」と思いながらも我慢していたことが、だんだんと「おかしい!」「やめるべきだ」と認知され始めて、声を上げる人たちが増えてきた証拠でもあります。
中でも、働く人たちにとって身近なのが、職場でのハラスメントです。セクハラやパワハラだけではなく、アルハラやスメハラなんていう言葉を聞いたことがある人も多いでしょう。アルハラはアルコールハラスメントの略で、スメハラはスメルハラスメントの略です。実はいずれも、どの職場での普通にあり得る立派なハラスメントなのです。
普段ハラスメントなんてあまり意識していないという人でも、それぞれの意味を理解すると、「それ、私の職場でも普通にある!」とビックリするかもしれません。
イヤだなと思いながらも「会社ってそういうもの」と我慢していた人も、「これってハラスメントだったんだ」と気づくことがあるかもしれませんし、逆に、コミュニケーションの一環として悪気無くかけていた言葉がハラスメントに該当すると知って、ビックリすることがあるかもしれません。
ここでは、職場でのハラスメントについて、その種類や対処法についてみていきましょう。
職場でのハラスメントにはどんな種類がある?
では具体的に、職場で起こりうるハラスメントにはいったいどんなものがあるのかをみていきましょう。
ハラスメントと一言で言っても、その種類は30とも40以上あるともいわれています。ここでは、職場でよくありがちなハラスメントをいくつかご紹介していきます。自分の身近で見聞きしたことがないか、じっくり考えながら読んでみてくださいね。
職場でのハラスメントといえばこれ【セクシュアルハラスメント】
職場でありがちなハラスメントといえば、誰もが思い浮かべるであろう、セクシュアルハラスメント。略して「セクハラ」です。
職場の同僚や部下に、性的な言葉を投げかけたり、恋人の有無をしつこく聞いたりするのもセクハラにあたります。もちろん、本人の同意を得ることなく体に触れたり、恋愛関係を迫ったりするのも絶対にNG。
そして多くの人は、セクハラと聞くと、男性から女性へするものというイメージが強いかもしれませんが、実は同性同士や、女性から男性に対するセクハラというものも多く存在するのです。
たとえば新入社員の女性の緊張を解いてあげようと、恋バナを振る女性も多いかもしれません。しかし、話題や相手の気持ちによっては、これも立派なセクハラになる可能性があるのです。「彼氏とは何年付き合ってるの?結婚するの?」なんて、気軽に聞いてしまいがちですが、相手が苦痛だと思ったらそれもセクハラになりかねませんので、十分注意が必要です。
また、男性の後輩社員に、親しみをこめたつもりで「だから彼女ができないのよ」「私がいい子紹介してあげようか?」なんて冗談を飛ばすのも実はちょっと危険かもしれません。
特に相手が、自分より立場が弱かったりする場合、内心イヤだと思っていてもなかなか言い出せない可能性がありますので、不安な場合は、そういう話題を最初から避ける方が無難といえるでしょう。
職場のハラスメントの代表格【パワーハラスメント】
「パワハラ」こと、パワーハラスメントもまた、セクハラと並んで、職場でありがちなハラスメントの代表格といえるでしょう。
セクハラや他のハラスメントとも結びついているケースもありますが、パワハラとは主に、上司や責任ある役職についている立場の人間が、その権力(パワー)をかさにきて、部下や立場の弱い人を相手に嫌がらせをすることを指します。
業務上の適切な範囲を逸脱して、職場で他の社員がいる前で大声で叱責したり、ありえない量の業務を割り振ったり、逆に仕事をまったく与えない、無視するなどの行為がそれにあたります。
また、パワハラもまた、セクハラと同様、冗談のつもりで「だからお前は駄目なんだよ」なんて言ったりするのも禁物です。言った方は軽い気持ちだったとしても、極端な場合、侮辱罪などの刑事罰を受けることにもなりかねません。指導熱心さのあまり、部下や後輩をつい厳しく叱りすぎてしまう、という傾向のある人は、ちょっと注意が必要かもしれません。
良かれと思って勧めたつもりでも、ハラスメントになりかねない【アルハラ】
「アルハラ」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。これは、アルコールハラスメントの略で、お酒を無理に勧めたり、飲めないことを揶揄したりすることを指します。
日本には、「飲み二ケーション」なんて言葉もあるほど、お酒は、人間関係や信頼関係を築くのに欠かせないツールとして認識されています。友人同士や、職場の同僚で居酒屋でワイワイ騒ぐのがたまらなく好き、という人も多いのではないでしょうか。
しかし、最近の若い人は特に、以前の若者ほどお酒を飲まないともいわれています。もちろん、体質や思想信条などの理由から、アルコールが一切NGという人も多いでしょう。そんな人を相手に、飲酒を無理強いしたり、呑めないことをバカにするような発言は絶対に許されることではありません。職場によっては、接待などお酒が飲めることが必要になるシーンもあるかもしれませんが、そういった場合にも、個人の体質や嗜好を尊重しなければなりません。もちろん、「一気飲み」を強要することなどもってのほか。
ひと昔前はコールに合わせてイッキをすることが「ノリがいい」ともてはやされていたものですが、それはもう時代遅れ。私たちの意識も、時代に合わせてアップデートすべきといえるでしょう。
法律でも禁止されています!【マタニティハラスメント】
職場でありがちなハラスメントの一つに、残念ながらマタニティハラスメントがあります。これは、妊娠や出産、育児などを口実として嫌がらせや不当な扱いを受けることが当たります。
最近はどの会社も意識が向上してきて、制度が整いつつあるとはいえ、まだまだ現実は厳しいと感じている人は多いのではないでしょうか。
これは、具体的には、妊娠がわかった社員に対して、それとなく退職を迫ったり、合理的な理由がないにも関わらず、降格や解雇、雇い止めをすることなどが挙げられます。もちろんこれには、正社員だけではなく、契約社員や派遣社員、パートタイマーやアルバイトなども含まれます。
他に、産休や時短勤務などの会社の制度を利用することに対して嫌味を言ったりするのも立派なマタハラにあたります。
「あなたが時短勤務を利用するせいで私の業務量が増えた」「育休を取るなんて迷惑」といったマタハラ発言に関しては、会社側が防止措置をとることが義務付けられています。つまり、本人が安心して育休などの制度をとることができるのはもちろん、他の社員に不満が出ないよう、適切な業務配分方法をとることは、会社の義務なのです。
妊娠や出産、そして育児に携わる人が肩身の狭い思いをしないですむよう、そして周りの社員も気持ちよくサポートできるような環境を整えることは、その職場の義務なのです。
職場でハラスメントを受けたときの対処方法
では実際に、職場でハラスメントに遭遇してしまった場合、いったいどんな対応をとるべきなのでしょうか?
職場の雰囲気や人間関係、相手との関係性によってさまざまなケースが想定されますが、もしもあなたがハラスメントの対象になってしまった場合、可能であれば、きちんと「やめてほしい」という意思を示すことが大切です。
相手に悪気がなく、冗談や、コミュニケーションの一環だと考えてハラスメントをしてきている場合、その相手は、あなたが嫌がっていることに気づいていないことが多いのです。ですからまず、可能なかぎり、曖昧に笑ったりせずに、毅然と「そういうことはやめてください」と伝えることが大切です。
しかし、職場でのハラスメントの難しいところは、相手の立場が強かったり、雰囲気や人間関係を壊してしまうのが怖いといった理由から、どうしても「やめてほしい」と伝えることが困難なケースが多いことでしょう。
そういった場合には、信頼できる上司や同僚などに相談して、第三者から伝えてもらうことも一つの方法かもしれません。できるだけ波風立てず、「ああいうのはハラスメントに当たるからやめた方がいい」「本人は何も言わないけれど、傷ついていると思う」など、上手に伝えてもらえればベストですよね。
それでも、職場の人に相談するのは難しい、逆にこじれてしまいそうで怖いといった場合には、人事や、ハラスメントやコンプライアンスを取り扱う窓口、もしくは労働組合などに相談するのが良いでしょう。全くの他部署、別部門に相談するというのはなかなか勇気のいることかもしれませんが、誰にも相談せずに一人で我慢するのは得策ではありません。職場では、誰もがハラスメントなど受けずに、気持ちよく働く権利を持っているのですから。
社内にそのような窓口、部署がない、相談するのが難しいという人は、職場がある自治体の労働局、または労働基準監督署に総合労働相談コーナーがありますので、そういったところで相談してみるのも良いでしょう。
また、直接の当事者ではなくても、「これはセクハラでは」「本人は何も言わないけど、これはパワハラだ」と感じるようなことを見聞きしたら、決して見てみぬふりをせず、「そういうのは良くない」「今のご時世、そういった発言は良くないですよ」ときちんと注意していくことが大切です。
そういった一人一人の小さな積み重ねから、職場の雰囲気や意識が変わっていくに違いありません。
職場でのハラスメントを事前に予防する方法は?
職場でのハラスメントを防ぐことは個人レベルではなかなか難しいことではありますが、少しでも「イヤだな」「やめてほしいな」といった言動を受けた、見聞きした場合には、きちんとその意思表示をすることが大切です。
職場での人間関係上、なかなかきっぱりと「やめてください」と言うことは難しいことが多いですが、何も言わずにニコニコ受け流しているだけでは、相手はいつまでたってもあなたが嫌がっていることに気づかず、また、周りもあなたの気持ちには気付いてくれないかもしれません。
直接に本人に、「やめてほしい」と言えない場合には、信頼できる同僚や上司に相談することも大切です。周りもなかなかビシッと注意することは難しいかもしれませんが、たとえば冗談でも「〇〇さん、それ、セクハラですよ!やめましょう」なんて言ってくれれば、それだけでもだいぶ雰囲気が変わるのではないでしょうか。
他に、部署内や社内の勉強会などで、ハラスメントに対する意識を向上させていくことも必要でしょう。なかなかズバリ、社内でのハラスメントについて話題にすることはできなくても「先日こんなニュースがありましたが…」といった切り口から、職場の意識を変えていくことは可能なのではないでしょうか。
職場でのハラスメントを事前に予防する方法は?
職場でありがちなハラスメントの種類や、その対応策についてみてきました。あまり意識していなかったけれど、あれってパワハラだったんだ、と思うこともあれば、自分もうっかりセクハラ発言をしてしまっていたかも、とひやりとした方もいらっしゃるかもしれません。
セクハラやパワハラといった言葉は知っていても、本人同士の信頼関係や、業務上どうしても必要な事項など、なかなか線引きが難しいところが、職場で起こりがちなハラスメントのやっかいなところです。親しみをこめて接したつもりが、セクハラ発言ととらえられてしまったり、楽しく一緒に飲もうとしたのに、「アルハラです!」なんて言われてしまったらショックかもしれませんね。
それでも、個人の人格や尊厳を傷つけるような発言や処遇などは絶対に許されるべきではありませんし、業務上必要のない個人的な会話は、極端な場合、避けておくというのも一つの方法かもしれません。
もちろん、なんでもやみくもに「ハラスメントです!」と抗議するのも考えものかもしれませんが、かといって「社会ってこういうものだから」「仕事だから仕方ない」と考えてあきらめたりせずに、イヤなことはイヤ、おかしいと思ったことはおかしいと声を上げることがまずは大切でしょう。
誰もが職場でストレスを溜めることなく、いきいきと働けるように、一人一人が意識を高めて、おかしいことにはおかしいと、毅然と対応できるような雰囲気づくりを心がけていきましょう!