楽しく生きるための10の方法をラオス人に学ぼう

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法~幸せの定義~

ラオス人の男性と結婚して24年、共働きでなんとか一人娘を育て終えました。そして、一昨年2019年10月、ラオスに移住し首都ビエンチャン郊外の高床式の小さな家での生活をはじめました。移住後暫くしてコロナで国境が封鎖され、気がついたら一年以上の月日が過ぎていました。

緊張体質でストレスを感じやすい私に比べると、夫は楽観的で自然体、落ち込んだり悩んだりすることがほとんどありません。歳を重ねるに連れ、ますます人と付き合うことに臆病になっていく私とは逆に、夫は数え切れないほどの友人や親戚に囲まれ、飲み会や各種イベントで毎日忙しく飛び回っています。

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国連の世界幸福度ランキングによると、世界153カ国中、日本は62位でラオスは104位となっています。同調査の幸福の基準はGDP、健康寿命、生き方の自由度、政治の腐敗程度、自分が幸せと感じているか、助けてくれる友人や家族がいるかなどです。

もし、生まれる国を選べるとしたら、世界最貧国に属し、医療レベルも低いラオスを選ぶ人は少ないかもしれません。
ラオスに関する 9 つのヘルスケアの事実

一人娘も中学3年生のときに日本で生きることを決め、現在は東京で働いています。彼女が日本を選んだのは、経済や医療の問題というよりは、自分の生き方を自分で自由に決めたいからです。

統計上は、より幸福度が高いとされる日本ですが、そこで暮らす人を見ると、ストレスを抱えて辛そうに生きている人が少なくありません。私の知り合いでも、精神安定剤や睡眠薬を服用している人がたくさんいます。かくいう私もぜいぜい喘ぎながら不器用に生きている一人です。少なくとも中国で現地採用社員として日系企業で働いていた昨年までは、辛い、悲しい、苦しいと毎日のように日記に書いていました。

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社会環境は日本よりもだいぶ厳しいはずのラオスですが、そこで暮らす人はよく笑いよく話し、穏やかにのんびりと生きています。世界の自殺率を見ても日本が10万人あたり18.5人いるのに対して、ラオスは8.6人で半分以下です。生活環境の厳しいラオスのほうが、日本人よりも追い詰められずに暮らしている、統計からはそんな状況が伝わってきます
国の自殺率順リスト – Wikipedia

ラオスに移住して一年がたち、私も前よりはだいぶ楽に生きているように感じます。知らず知らずのうちに、ラオス人から楽しく生きるヒントを与えてもらっているのかもしれません。ラオスの人々の健康な心を支えているものとは一体なんなのか、少し考えてみたくなりました。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法①祈り

ラオスは国民の80%以上が仏教徒と言われています。仏教は大乗仏教と上座部仏教に別れ、ラオスなど東南アジアの仏教国は上座部仏教を信仰しています。

上座部仏教は大乗仏教に比べると戒律が厳しく、僧侶は妻帯せずお酒も飲まず、昼12時以降は食べ物を口にすることができません。

信徒も、四季折々の仏教行事に参加し、日常生活においてもお布施や托鉢を欠かさず功徳を積むことを心がけます。

もともと仏教は、病気や別離、死などの苦しみから解放されるための正しい生き方をブッダが教え広めたものです。仏教は人が楽しく生きるための方法を伝える教えなのです。イスラム教やキリスト教を信仰する国々に比べて、仏教国が比較的平和で争いが少ないのは、仏教の教えと深い関係があると思われます。

仏教の教えとは、執着や争いを諫め、寛容や慈悲の心を大切にしなさいという教えです。過去の出来事を悔んだり、将来を憂えて不安を感じることをやめ、今この瞬間をしっかりと生きろと諭しています。

自分を振り返ってみると、以前は仕事に関して、今は夫との生活で、憎しみや怒り、後悔や不安の念が度々沸き上がります。すると、負の思考が頭の中を堂々巡りし始め、巡るたびに新たな妄想が加わり、怒りや憎しみが倍増していきます。

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負の思考を堂々巡りさせる原因は、自分にとって悪いことが起こるのが怖いからだと思います。しかし、マイナス思考をいくら巡らしても、良いことは起こらないし、悪いことも避けられません。それどころか、疑心暗鬼は物事をよけいにややこしい方向に運んでしまうようです。

不安な状況とはきっぱり縁を切るか、切れなければ最悪の事態を潔く受け入れる覚悟をする。あとは、目の前の事に集中し、今あるものを楽しんだほうが、精神衛生上良いということに、ここで暮らすうちに、そんな風に考えるようになりました。

現在、一日10分ほどマインドフルネス瞑想をしています。ストレス解消や集中力アップに効果があると言われるマインドフルネス瞑想は、もともと仏教の修行である瞑想や座禅から発展したものです。瞑想を日常的に行うと、自分の思考を観察したり、コントロールすることができるようになります。ネガティブ思考が堂々巡りを始めたら、それに気づき、ストップをかけることが、徐々にできるようになってきました。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法②分ける

ラオスでは家族、親戚、友人の間で気前よく物の貸し借りを行い、お金や物をおおらかに融通しあいます。裕福な人は、そうではない家族や兄弟、友人に対して気前よく分け与えるのが当然とされています。社会的地位の高い人、収入の多い人は、当然のようにお勘定を任されるという場面を度々目にします。

おごる人も、おごられる人も平然としていてお礼を言うわけでもなく、申し訳なさそうにしている様子も見られません。これは、おごる方はその行為によって功徳を積むことができるからで、おごられる方も、おごる人が功徳を積むことを手助けしていると考えるからだと聞いたことがあります。実際にその場では、誰もそこまで深く考える様子もなく、呼吸と同じように自然な行為になっているようにも感じます。

ラオスでは毎朝5時になると、各村のお寺の僧侶が托鉢に回ります。人々は跪いて僧侶たちにもち米やお菓子などを捧げます。僧侶は頭を下げることはなく、代わりに1分ほどお経をあげて立ち去ります。

お年寄りはも、毎日僧侶のために食事を作って寺に持ち寄ります。僧侶に食事を捧げると同時に、自分たちもおしゃべりや食事を楽しみながら、お寺でのんびりと過ごします。

脳内物質のオキシトシンは人と親しく交流したり、思いやりの温かい心を持つとたっぷり分泌すると言われています。そして、オキシトシンの分泌によってリラックスした気分が保たれ、不安や恐怖といったネガティブな感情が抑制されると言います。

ラオスの人々は日々の暮らしの中に他者を思いやったり他者から思いやられたりする場面が多くあります。こうした暮らしそのものが、楽しく生きる方法なのかもしれません。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法③嘘をつく

ラオス人は日常的に小さな嘘をつきます。責められたくないから、相手を傷つけたくないから、揉めたくないからといった理由から、やったことをやってない、やってないことをやったなどと単純な嘘を平然とつきます。同じことを聞いても前回は「はい」と答えたのに、今回は「いいえ」と答えたりするのですが、こうした矛盾をするどく追及し合うことは無いようです。

夫も嘘をつくことがありますが、特に多いのが、友人や親せきなどに食事や飲み会に誘われて断るときです。家で寝ているのに「今出張で他都市にいるから参加できない」「叔父が病気でお見舞いに行くから」などと、すらすらとよどみなく嘘をつきます。

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こんなとき夫は罪の意識を感じていません。なぜなら「止むに止まれぬ事情があるから、どうしても参加できない」と言って断れば、相手のメンツを潰さずに済むからです。人付き合いを大切にするラオスで無碍に誘いを断れば、相手を傷つけたり関係性が壊れたりしてしまいます。かといって、疲れて家で寝ていたいのに、断れないから無理して出席すると自分のストレスになります。

ラオスで人々が日常的につく小さな嘘は、人と人が気持ちよく交流するための潤滑油のような役割を果たしているようです。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法④話す

ラオス人は人付き合いをとても大切にします。休日や祭日になると、親戚や友人宅を訪れておしゃべりしたり、飲み食いしたりして楽しみます。首都ビエンチャンでは郊外に農地を持つ家庭も多く、週末には友人や親せきを誘って、農地でバーベキューパーティーを楽しむ人もたくさんいます。こうした集いはたいていが長丁場で、お昼前から夜遅くまで話し続け、食べ続け、飲み続けます。

気のおけない仲間との語らいは、ラオス人にとっては良いストレス解消になるようです。ラオス人の付き合い方を見ていると、お互いにさほど気を使うこともなく、特別な接待をするわけでもありません。ただただ、ともに食べ、飲み、話しています。のんびりとリラックスした雰囲気の中で、他愛もない会話をいつまでも楽しんでいる彼らは、本当に幸せそうです。

幸福感というものを脳科学的に説明すると、脳内に神経伝達物質のセロトニンやオキシトシンが分泌し、気持ちが安定してリラックスした状態のことを指すようです。愛情ホルモンとも呼ばれるオキシトシンは、人を思いやったり、親しく会話したり動物と触れ合ったりしてゆったりした気分でいる時に多く分泌されるようです。

ラオス人は朝起きてから寝るまでに、多くの人と語り、触れ合い、交流します。ですからオキシトシンがたっぷりと分泌されます。オキシトシンは、ストレス軽減や免疫力アップ、不安や恐怖心を和らげるという作用を及ぼします。ラオス人の生活スタイルは、ストレス過多の日本人と真逆と言えるかもしれません。

頑張りすぎず、我慢しすぎず、緊張をほぐしてのんびりと暮らす。ラオス人に学んだ楽しく生きる方法は、エコでお金もかからない、おすすめの方法です。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑤寝る

ラオスの人は基本早寝早起きです。学校や役所なども8時に始まり4時には終了です。商店やレストランが閉まる時間も早く、日本のように深夜遅くまで外で飲み歩くような人は少数派です。また仕事や専門性の向上のために寸暇を惜しんで勤勉に働く人も、めったに見かけません。仕事が終われば家に帰り、家族との食事やおしゃべりを楽しむ人が多いようです。

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ラオスでは仕事や勉強が原因で寝不足だという人に会ったことがありません。上述したように、セロトニンという脳内物質が十分に分泌すると、緊張を和らげリラックスした状態が保てます。セロトニンを十分に分泌させるために最も必要なことは、早寝早起で規則正しい生活を送ることです。また、十分な睡眠をとることは、疲労回復や正常な思考力を保つために不可欠です。

勤勉な日本人は世界的に見ても睡眠時間の短さと労働時間の長さが突出しているようです。2018年にOECDが実施した調査によると、日本人の平均睡眠時間は6時間27分で断トツワースト1位です。寝不足で働きすぎると、疲労が蓄積し思考がますますネガティブに陥り、幸せは遠ざかってしまいます。
睡眠偏差値「日本の平均睡眠時間」

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑥急がない

自動車の普及が著しいうえに、バイクに乗る人が多いラオスでは、バイクと自動車の衝突事故が後を絶ちません。自動車保有量の急激な増加で横断歩道・歩道橋・信号の整備が間にあわず、ビエンチャン市中心部など、歩行者が安全に道を渡ることすら至難の業です。ラオスの首都ビエンチャンの交通状態は絶望的なのですが、不思議なことにクラクションが鳴り響くことはほとんどありません。

お隣のベトナム、中国では渋滞にクラクションが長音で鳴り響くのは日常的にみられる光景です。ラオスでクラクションが響かないのも、鷹揚で寛容を尊ぶ文化に起因すると思わます。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑦走らない

「稲を植えるのがベトナム人、稲が育つのを眺めるのがカンボジア人、稲が育つ音を聞いているのがラオス人。」

これは、フランス統治時代にインドシナ三国の国民性や労働意欲を説明するときに使われた言葉です。ベトナム人は南国気質でのんびりしているというイメージがありますが、インドシナ三国では圧倒的に勤勉で利に聡いという評価を受けています。

フランス統治時代にラオス国内で中級役人として採用されたのは、ほとんどがベトナム人で、ラオス人は労働力としての価値が低いとみなされていました。ラオス内戦でも兵力や戦闘状況を見ると、ベトナムの軍隊がラオス人民軍を勝利を導いたといっても過言ではありません。

労働力、戦力としては優秀ではないとされたラオス人ですが、その人柄や民族性に関しては、多くの外国人を魅了してきたようです。1930年代にラオスを訪れた研究者のヴァージニア・トンプソンは、その鋭い観察眼でラオス人をこう評しています。

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「(フランス人は)ラオス人の穏やかな愛想の良さや美しい風貌に魅せられている人は多い。…西洋流の貪欲さや競争に疲れ果てているヨーロッパ人にとって、ラオスはその全ての問題に対する答えのようである。」(マーチン・スチュアートフォックス著『ラオス史』P68)

およそ100年の月日を経た今でも、貪欲さや競争に疲れ果てている先進諸国から見ると、ラオス人の暮らしぶりから学べることは多いのではないかと感じます。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑧怒らない

中国で暮らしていた頃、人々が激しく喧嘩をしている光景をよく目にしました。団地や職場、学校など人の多く集まるところには、争いがつきものでした。しかし、ラオスに来てから人が喧嘩したり、怒鳴ったり、怒ったりする姿を見たことがありません。もちろん、家の中で夫婦や親子、兄弟同士で喧嘩したという話はふつうに聞きますが、人前で怒りをあらわにする人は見かけません。

仏教に正思惟(しょうしゆい)という教えがありますが、これは常に正しい思考を心がけなさいという意味です。正しい思考とは

・無害心(むがいしん)=「他の生命を傷つけない気持ち」
・無瞋恚(むしんに)=「怒らない気持ち」
・無貪欲(むとんよく)=「必要以上に欲張らない」

の三つの思考を指します。ラオスにいて感じるのは、このような仏教の教えが、書物や授業、講演や説法で教え諭されるわけではなく、暮らしの中で親から子へ、地域の大人たちから子供たちへと自然に受け継がれているということです。

ラオスの主要民族であるラオ族の間では、数百年にわたって仏教が国教とされてきました。新たに王になる者は、寺に入り8日間、戒律を守って過ごしたと伝わります。

現代のラオスでも、仏教は人々の暮らしの中で、最も大切な位置を占めます。例えば、父母が亡くなったとき息子が出家して僧侶として一定期間過ごすことが最大の親孝行とされています。これにより、両親が成仏して極楽浄土に迎えられるのを助けると信じられています。私の夫の両親はすでに他界していますが、夫は父親を亡くした時、母親を亡くした時とこれまでに2回出家しています。

仏教の教えが生活や思考の中に根付いているラオスでは、人々は教え諭されなくても自然に鷹揚で寛容的に振る舞います。これが、回り回って世の中の人が楽しく生きることにつながっているのかもしれません。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑨無理しない

ラオスでよく耳にする言葉に「サバイ」という言葉があります。これは「気持ちが良い」という状態を表す言葉です。ラオス人の多くは、気持ちが良い状態でいることを最優先に考えているように感じます。

ラオスでは工場や飲食店などの従業員が短期間で仕事を辞めてしまうことがありますが、これもサバイを追求する精神と関係があるようです。職場環境がとりわけきついというわけでもなく、マイペースな仕事振りをとがめられるわけでもない。故郷の暮らしが恋しくなった、仲良しの従業員が辞職した、といった小さなことでも「気持ちが悪い」と感じると躊躇なく仕事を辞めてしまいます。

そんな彼らを見ていると、もしかしたらこれが本来の人間の姿なのかもしれないと感じるときがあります。忍耐と我慢と努力を続けながら、正解のわからない職場で労働者として働き続けることは、実はとても理不尽で不自由で不自然なことかもしれないと。

ラオスでは過労死やいじめといった言葉を聞きません。我慢や忍耐が美徳と考えられる社会ではないからかもしれません。

ラオス人に学ぶ楽しく生きる方法⑩貯めない

「宵越しの銭は持たない」といった姿が格好良かった時代が日本にもありました。現代のラオスでもお金を貯めることよりも、今を豊かに生きることをより大切に考えている人は多いように思われます。

ラオスはライター一つ自国では製造しない、と言われるほど生活物資を輸入に頼る国です。ティッシュペーパーや洗剤など生活必需品は、タイ製品、中国製品、ベトナム製品がほとんどです。必然的に、物価も中国やタイよりも高めになります。

1人当たりの名目GDP国別ランキングを見ると、ラオスは193カ国中139位、2700ドルほどです(日本:25位、4万ドル。タイ:82位7800ドル)。収入は少ないけれど、物価は高い。それでも、人々は結婚式や各種の記念パーティーを盛大に祝い、友人や親戚との付き合いでもケチケチせずに大盤振る舞いです。

ラオスの人は今を楽しむことを大事にしています。同時に、人情や人脈の貯蓄を増やすような生き方を心がけているように感じます。国情、政情が不安定な国で生きる人々の知恵なのかもしれません。このようにお金や国に頼らずに、人情や交流を大切にした生き方は、オキシトシンの十分な分泌に繋がり、幸せな心をもたらしているのかもしれません。
(世界の1人当たり名目GDP 国別ランキング・推移(IMF) – Global Note

もう少しだけ楽にいきるために

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自然豊かで伝統的な暮らしを守るラオスは「東南アジア最後の楽園」などと雑誌などで紹介されることがあります。

しかし、実際にはどうでしょう?外国人に見えるのはラオスの表の顔に過ぎず、中に入り込むと複雑で難しいところがたくさんあるのかもしれません。

でも、どう見ても、自分よりも楽しそうに笑う彼らを見ていると、1つでも2つでも学べることがあると感じてしまうのです。日々、彼らの鷹揚な対応や寛容の精神に助けられながら暮らしていると、自分も彼らから学ぶことで、もう少しだけ楽に生きれたらなと感じます。

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