緊急事態宣言中の現在は出張自粛が多数派に
新型コロナウイルス感染症の蔓延に伴って、まだ日本各地で感染者が増えている状況が続いています。
厚生労働省によると、新型コロナウイルス感染症の国内での新型コロナウイルス感染症の感染者は令和3年6月8日現在763,891例、死亡者は13,645名。
入院治療等を要する患者は39,070名となっています。国内、海外においても世界的に新型コロナウイルスの発生状況はまだ終わりが見えない状況が続いているという見解を明らかにしています。
厚生労働省|新型コロナウイルス感染症について > 国内の発生状況など
緊急事態宣言の発令によって、大手企業でも出張の延期措置、県外移動禁止措置などの対策がとられているようです。
特に感染者が多い首都圏や関西発着の出張を見合わせる企業が多く、営業マンが遠方の得意先へ訪問するのは原則禁止となり、オンラインでの会議や営業を行うといった方法でしのいでいるという状況ではないでしょうか。
顧客によっては、直接会って話をする方が効率が良い場合も多いものです。
「うちは小さな会社で、地方の職人さんとコラボして小さな家具をはじめとする物作りをしてきました。しかしコロナの一件で仕事の仕方ががらりと変わってしまい、zoomはやらないという職人さんも多いんです。
オンラインでは職人さんに細かい部分が伝わらなかったり、意志の疎通がうまくいかなかったりして戸惑うこともありますよね。
やはり前のように自由に出張して、実際に職人さんと会って、「ここの部分をこうしたらどうだろう」とかじっくり話をしながらアイデアを形にするというのが一番良かった。緊急事態宣言解除後には、再び出張ができるようになるのでしょうか。
僕らの世代はまだコロナワクチンの順番が回ってこないし、今後出張のたびにPCR検査を自費でするのも経済的に打撃。このままでは先行きが不安です」(51歳・会社経営)
オンライン会議では、独特の距離感があり、相手に伝わらないことも多いという意見は多くの営業職の方が感じているのではないでしょうか。
自由に出張に行けないのはコロナ禍においてやむおえないこととは言え、経済的損失は大きいと言えそうです。
緊急事態宣言解除後の出張はどうなるの?
誰もが不安の中で、期待を持っているのが緊急事態宣言解除後の出張はどうなるのかということではないでしょうか。
しかし、緊急事態宣言が解除されたとしても、コロナウイルスが消えてしまうわけではありません。緊急事態宣言解除後の出張を考える上で、まずは新型コロナウイルス感染症について軽くおさらいしておきましょう。
新型コロナウイルスの潜伏期間は1~14日と言われています。世界保健機構(WHO)の発表では、多くの場合、感染後5~6日程度で発症することが多いと言われるようです。
すでにニュース等でご存知の通り、新型コロナウイルス感染症の症状は軽症と重症化にわけられます。
ほとんどの人が初期症状では軽症ですが、急激な発熱や解熱を繰り返したり、咳き込む、下痢や嘔吐などの消化器症状や意識障害などの神経症状など、人によって体感がかなり違うことも知られています。
特徴的なのは、嗅覚や味覚障害が生じることで気づく人も多いようです。
コロナウイルスに感染しても無症状で経過する人もいて、一方で肺炎が悪化し重篤化することによって、急性呼吸器症候群や敗血症性ショック、多臓器不全、血栓症などが起こり、集中治療室に入り亡くなる方も少なくありません。
また、軽傷であっても、頭痛や発熱、嗅覚障害、睡眠障害など後遺症に苦しむ人も数多くいるのが現実です。
また、緊急事態宣言解除後の出張をますます困難にする要因が、2021年6月現在、世界各国で報告される新型コロナウイルスの変異株が国内でも蔓延し始めているということです。
中には通常よりも感染率が高く、かかると重症化しやすい可能性がある変異株や、ワクチンが効きにくい可能性がある変異株などが国内外で急速に広がっています。
変異株は高齢者のみならず、若者や子供でも重症化する人が多いため細心の注意が必要です。
MedicalNote|新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の主な症状とは
今まで幸いにも新型コロナウイルスの感染とは無縁だった人も、現在の変異株が猛威を振るう状況での出張は感染の危険と常に背中合わせであることを忘れないことです。
もし感染した際に自分自身の体に新型コロナウイルスがどのようなダメージを与えるかは未知数であることを心に留め、感染対策を万全に行っていきましょう。
緊急事態宣言解除後の出張は安心?
現在の新型コロナウイルスの感染状況から考えると、残念ながら緊急事態宣言が解除された後も、出張には常に感染のリスクが伴います。緊急事態宣言解除後も、より強い感染力を持つ新型コロナウイルスの変異株は次々と現れます。緊急事態宣言が解除されることで行動制限が緩和され気がゆるめば、感染力の強い変異株は容赦無く襲ってきます。
このことから、緊急事態宣言解除後の出張でも安心・安全とは言い難いのです。緊急事態宣言解除後の出張も、企業ぐるみ、そして個々で常に安全配慮対策、感染防止対策を行うことが必須です。緊急事態宣言が解除されても出張で気を抜いてはいけません。まだ決定的な新型コロナウイルスの対策が確立されていない中での出張の再開は、誰でも感染リスクを伴うのです。今まで通り変わらず感染対策には細心の注意を払うことが重要です。
緊急事態宣言解除後の出張を断ることもできる?
例えば、緊急事態宣言中は原則出張禁止としていた企業も、緊急事態宣言解除後は少しぐらい大丈夫だろうという考えから「感染防止対策を十分に行い、先方の了解を取った上で訪問する」というところが増えてくるかもしれません。もし、あなたに既往症があり、ワクチンなども摂取できておらず、新型コロナウイルス感染の不安や心配があるのなら、それを正直に話してみるのも良いかもしれません。
場合によっては感染率が高い地域に出張に行かねばならない場合もあるでしょう。労働組合がある職場なら、感染拡大予防のために会社との話し合いをより確実に行うことができます。会社は法律によって労働組合から申し入れられた交渉を正当な理由なく拒むことはできないからです。いざという時には自分の身を守るために、このことを覚えておくと良いでしょう。
緊急事態宣言解除後の出張で心がけるべき防御対策
ウィズコロナの時代。業務上、緊急事態宣言解除後にどうしても出張しなくてはいけない場合、いったいどのような防御対策、出張対策を心がけると良いのでしょうか。
緊急事態宣言解除後の出張対策①ワクチンの接種
コロナの出口戦略とも言われるワクチン接種は、今現在最も感染リスクを減らし、もしかかったとしても重症化のリスクを減らすことができると言われています。2021年6月現在、高齢者へのワクチン接種が進んでいるほか、企業での職域接種も徐々に普及しようとしていますが、日本のワクチン事情は、出張の現役世代にはまだまだ遅れ気味であることは否めない状況です。
出張の際、コロナワクチンの接種を受けたかどうかクライアントに尋ねられることも今後多くなるはずです。ワクチンの接種が済むまでは、緊急事態宣言解除後の出張でもより慎重な感染防御対策が必須です。
緊急事態宣言解除後の出張対策②PCR検査陰性の証明書
ワクチンがまだ済んでいない状況では、出張のたびにPCR検査を受けるのも良いでしょう。新型コロナウイルスが陰性である証明を受けることで、クライアントも危機管理、感染防止対策が行き届いていることに安心すると思います。逆に、PCR検査を受けていないと、営業をやんわり断られるケースも発生しています。
ただし、検査結果が陰性であっても、どこでどう感染するかはわからないため細心の感染防御対策は常に必要です。
緊急事態宣言解除後の出張対策③出張先の環境の確認
出張先がいわゆる3密ではないかどうか、どういった蔓延防止対策が取られているかを確認しましょう。こういった安全確保のための対策は企業側でも行うのが普通です。感染率が高い地域に出張させるのは、企業側の安全配慮義務違反となる可能性もあります。宿泊施設や一人で行けるレストランなどもあらかじめ感染予防対策について調べておくと安心できるでしょう。
緊急事態宣言解除後の出張対策④交通機関のチェック
緊急事態宣言に伴い、公共交通機関は減便や終電の繰上げなどの対策が取られています。路線や地域にもよりますが、感染予防対策のためには出張は多くの人が行き交うピーク時の公共交通機関での移動を避け、車両や駅などでソーシャルディスタンスがとれるよう工夫しましょう。窓を開けて換気されているかも重要です。なるべく空いている路線を選び、乗り換えを最小限に抑えるというのも良いでしょう。そして、移動後は必ず手を洗い消毒しておきましょう。
飛行機は比較的感染防御対策がとれています。というのも、毎回2、3分で空気が入れ替わることや、座席の背もたれが高いこと、マスク着用が義務であることなどから比較的安全と言われています。
乗りものニュース|飛行機「機内コロナ感染率」どれくらい? IATAが超具体的回答「極めて安心できる」
「以前から考えると激減してしまいましたが、経営上どうしても県をまたぐ出張が必要です。毎回PCR検査を行い、本来なら新幹線で行っていましたが、比較的安全という飛行機を使っています。航空会社によってはPCR検査代を負担してくれるところもあり助かります。ただし、検査料込みの場合は予約便だけとなり、日程調整ができず、キャンセルすると改めて追加料金を払わねばならないのが不便です。早くコロナのことを考えずに以前のように出張できるようになればいいなと思うばかり」(48歳・会社役員)
緊急事態宣言解除後の出張対策⑤出張先の会食先の厳選
出張時の食事や会食についても、ソーシャルディスタンスとマスク会食は必須です。商談などで対話が必要な時も必ずマスクをして飛沫対策をすることが、顧客のため、強いては自分自身のためとなるでしょう。レストランなどでは、検温の実施やアルコール消毒液の設置、換気、飛沫対策の環境整備がしっかりできているか確認して予約することです。また少人数で、お酒を飲まない(お酒が入るとどうしても陽気になり、感染対策がおざなりになりがち)などの感染対策も今しばらくは必要になるでしょう。
「出張でクライアントとの会食をするのは、楽しいだけでなく、仕事上でもとても重要な役割があると思うんですよね。心置きなく地元の郷土料理とお酒を楽しみながら、会話も弾みます。しかし、そういった機会がコロナ禍でことごとく失われてしまい、距離を取りマスクを外さず、気を使いながら打ち合わせをして、会食はなしという味気ないものになっています。もちろん夜は一人で食事。ホテルでテイクアウトのお弁当ということも。仕方ないとは言え、なんだか寂しい」(38歳・会社員)
緊急事態宣言解除後の出張対策⑥定番の感染予防対策を徹底
自分自身の健康観察だけでなく、マスク着用や手洗い消毒。そして密閉・密集・密接(3密)の回避が感染予防の基本。出張での会議や打ち合わせでも2m以上の距離を確保し、感染予防を心がけましょう。後は、顔や目をむやみに手で触らないことも重要です。
「感染対策はしっかりやっているつもりですが、花粉症で外に出ると目が痒くて本当に困ります。気がつくと手で触ってしまいそうで怖いため、メガネをかけ、どうしても痒い時はハンカチを使うようにしていますが本当につらいです。」(27歳・派遣)
花粉やアレルギー体質で彼女と同じ悩みを持っている人は意外に多いのではないでしょうか。手が洗えない場合は小型の除菌スプレーや除菌ジェルなどを携帯し、こまめに手指を除菌して感染を防いでいきましょう。
緊急事態宣言解除後の出張対策⑦自分の体調の変化に敏感になる
新型コロナウイルス感染症の初期症状には注意が必要です。鼻水や咳、発熱、軽い喉の痛み、筋肉痛や体のだるさなど、一見風邪のような症状が出たり、37.5℃程度の発熱には気をつけるべきでしょう。匂いや味がわからないという症状も特徴的ですので、自分の体調の変化には気をつけて、朝検温する習慣をつけると良いでしょう。また、何かおかしいなと思ったら、すぐにかかりつけ医に電話をして相談することも大事です。
もし緊急事態宣言解除後の出張で感染したら?
どんなに気をつけていても、かかる時にはかかってしまう新型コロナウイルス感染症。もしも緊急事態宣言解除後の出張中に新型コロナウイルスに感染したら、労災になるのでしょうか。
厚生労働省は「新型コロナウイルス感染省に係わる労災補償について」(令2.2.3基補発 0203第1号)の中で、「当分の間、別表第1の2第6号5の運用については、調査により感染経路が特定されなくとも、業務により感染した蓋然性が高く、業務に起因したものと認められる場合には、これに該当するものとして、労災保険給付の対象とする」としています。
参照:厚生労働省|新型コロナウイルス感染症に係る労災補償について
また、海外出張者に対し「出張先国が多数の本感染症の発生国であるとして、明らかに高い感染リスクを有すると客観的に認められる場合には、出張業務に内在する危険が具現化したものか否かを、個々の事案に即して判断する」とあります。もちろん国内出張においても、業務上外の判断について、個別の事案ごとに感染経路や業務又は通勤との関連性や、業務又は通勤に起因して発症したと認められる場合には、労災保険給付の対象となるようです。
感染経路が特定でき、業務と関連しているのが明確にわかれば、労災保険によって休業補償および医療費などの療養補償を受けることができるでしょう。
緊急事態宣言が解除されても、出張は気を抜かないで!
どんなに戻りたくとも、コロナが流行る以前の平和な世界線にはもう戻れないという意見が多く聞かれます。私たちはコロナウイルスと共存し、新しい生活様式を受け入れながら、出張、通勤、オフィスでの仕事の安全な対策を模索していかねばなりません。
感染力が強い新型コロナウイルスの変異種の流行により、企業にとっては会社でクラスター感染が起こることが何よりも怖いことです。出張に行く側も、訪問される側も、誰もが安全、安心であることを求めるのは必然と言えるでしょう。
今回の結論としては、緊急事態宣言が解除されても出張では気を抜くことはできないのが現状です。コロナをインフルエンザ、風邪のようなものだと軽く捉える人もいますが、そうではない現実も明らかです。
今後、世界はコロナウイルスと対峙しながら明るい方向に向かっていると思いたいものです。新型コロナウイルスのワクチンの接種などで重症化リスクを減らしていくことや、出張前にPCR検査などをこまめに受け、クライアントに安心してもらうことで、出張も今後徐々に落ち着いて行くのではないでしょうか。