そもそも自律神経が乱れてしまう原因とは?
自律神経が乱れる。それは実際はどんなことを言うのでしょうか。普段よく耳にすることはあっても、実際に自律神経について明確に答えるのって、意外と難しいですよね。
自律神経をもう一度おさらいしよう
神経とは、体の各部にある組織と脳をつなげる役目をしているものです。
指令や情報が神経を通じて行き来することで、 手足を動かしたり、痛みを感じたりと、体は正常に機能することができます。
神経は、
- 脳や脊髄にある中枢神経
- 全身にある末梢神経
この2つに大きく分けられ、更に末梢神経には「体性神経」と「自律神経」があります。
末梢神経のうち、体性神経は運動をする機能に関わっていて「動かそう」という意図により、意識的に手や足を動かすことができるのが特徴です。
これに対して、多くの内臓器官の機能に関わる自律神経は、「今から胃を動かして食べ物を消化しよう」と思ったとしても、自由にコントロールすることはできません。
また、自律神経は「交感神経」と「副交感神経」に分けられ、シーソーのようにバランスをとりながら働いています。指令や情報は、自律神経のほうが体性神経よりもゆっくりと伝わります。
自律神経が乱れるとどうなるの?
仕事をしたり緊張したりするときは交感神経が、休んだりリラックスしたりするときは副交感神経が活発になっています。
このどちらかが活発に働いてしまったり、逆にどちらかが働かない状態になった時に、自律神経の乱れが生るのです。
特に胃腸は、自律神経によって働きがコントロールされている器官です。胃や腸が活発に働くのは、副交感神経が優位なときですが、ストレスを受けると交感神経が優位になるので、消化吸収に影響を及ぼし、胃のもたれやムカつき、下痢や便秘などを引き起こしやすくなるのです。
自律神経の乱れは身体だけでなく、精神面でも大きな作用を及ぼします。イライラ、不安感、疎外感、落ち込み、やる気が出ない、ゆううつになる、感情の起伏が激しい、あせりを感じることもあります。
交感神経が活発になると
血管がキュッと収縮し、瞳孔が開いて心拍数が増えます。血圧も上昇して膀胱が弛緩します。アクティブかつ前向きな気持ちになることがほとんどですが、これがストレスによる交感神経の活発化になると息が苦しくなったり、何度もトイレに行きたくなったり、汗が出たりするわけです。
副交感神経が活発になると
血管が適度に弛み、血圧は低下して心拍数は下がり、穏やかな気持ちになります。寝ている時はこの状態なので、胃腸の動きが活発化して消化を促したり、膀胱が収縮して寝ている間にトイレに起きることも少なくなります。
これらのことから、活発に動くときや、緊張状態にあるときは交感神経が、休養時やリラックス状態にあるときは副交感神経がそれぞれ活発になっていることがわかります。
交感神経と副交感神経が互いにバランスを保っていることで、内臓器官の働きのバランスが保たれるので、これらをいつも良い状態でいるために、
- スマホやブルーライトを見ると脳が興奮状態になるため、夜寝る直前は避ける
- 腸の状態が悪くなると、副交感神経の働きが下がってしまうので、腸内環境を整えるようにする
- 軽い運動を意識して行い、脳の血流を良くする
など、簡単に出来て自律神経を整えるために役立つことはたくさんあります。
自律神経が乱れる原因ベスト3
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アクセルとブレーキのように、交互に働いて均衡が保たれている自律神経ですが、どちらかがバランスを崩すと、自律神経に乱れが生まれます。
ではその原因にはどのようなものがあるでしょうか。
自律神経が乱れる原因①精神、身体にかかるストレス
ストレスと言えば、人間関係がほとんどかもしれません。他には仕事のプレッシャー、過度な労働、事故、怪我もストレスになります。
さらに、敏感な人は音、光、温度なども身体のストレスとなって自律神経の乱れの原因となりえます。そのストレスが限界に達すると、交感神経と副交感神経のバランス、つまり自律神経のバランスが乱れます。
自律神経が乱れる原因②不規則な生活
私たちの体は一定のリズムに従って働いています。昼夜逆転の生活サイクルや慢性的な寝不足、食生活が不規則だったりすると、生体リズムが狂って自律神経のバランスを乱す原因となります。
自律神経が乱れる原因③病気が原因で起こる自律神経の乱れ
自律神経が乱れる疾患と言えば、自律神経失調症や更年期障害がよく知られています。自律神経失調症は、心と体の過剰なストレスが引き金となって自律神経が乱れることで発症し、その症状はさまざまです。
更年期障害では、女性ホルモンの急激な減少で自律神経が乱れ、突然のほてりやのぼせ、頭痛、めまいなどさまざまな不調があらわれます。
呼吸法を変えると自律神経の乱れが整う!
一度乱れた自律神経を整えるためにはどんなことをしたらよいのでしょうか。効果のあるものとして呼吸法が知られています。
呼吸と自律神経の関係
自律神経の中枢は脳の視床下部という場所にあります。
呼吸を正しく行い、姿勢をきちんとしていれば、脳に流れる髄液の流れをつくることができるます。よって自律神経を整えるのに呼吸はとても大切なのです。
脳脊髄液とは、脳から骨盤の骨である仙骨までを循環する体液のことを言い、脊髄の中にある神経の新陳代謝を促す役割があります。
この脳脊髄液の流れが悪くなると、自律神経が栄養不足になり、老廃物がたまって内臓の機能などが低下するのです。頭痛やめまいなどの症状が現れることもあります。
深い呼吸は、脳脊髄液の流れをよくするのに重要
深い呼吸をすることは、脳脊髄液の流れをよくするにはとても重要なことです。深呼吸は、肺を保護する胸郭を開いたり閉じたりするため、背中や肩、首の筋肉を動かすことになります。その結果、脳脊髄液がしっかりと流れることができるのです。
現代に生きる私たちは、スマホやゲーム、パソコンなどを見つめる時間が多く、どうしても首が前に出て猫背になりがちです。このような状態が長く続くと呼吸も浅くなり、結果として脳髄液の流れも悪くなります。意識して胸を開き、正しい呼吸を心がけましょう。
普段の私たちの呼吸法はどんな呼吸?
呼吸の最も大切な役割は「脳」と「体」に酸素を供給することです。その呼吸は「脳」によって無意識にコントロールされています。 日常のほとんどは「安静時呼吸」をしています。私たちが無意識でしている、自律神経の働きによっておこなわれている静かで穏やかな呼吸です。
これに対して安静時では使わない筋肉を使う呼吸を「努力性呼吸」と言います。精神的ストレスや長時間の悪い姿勢によって呼吸が乱れると、呼吸機能が低下し、脳に行きわたるはずの酸素が不足しやすくなります。
そうした脳機能の低下により、リラックスした安静時であっても、努力性呼吸でのみ使われる筋肉が働いてしまい、脳と体は過緊張状態になり、肩こりや首の痛み、頭痛、また感情のコントロールがきかなくなるというような症状が現れやすくなるのです。
自律神経を整える呼吸法
朝食前や就寝前などの時間帯に、それぞれ5~10分間行うと良いでしょう。
①姿勢を正し、上半身はリラックスします。目はうっすらと半目状態にし、少し先の床あたりに焦点を定めます。
②鼻から5~6秒かけて息を吸い、口から「シュー」という呼吸音と共に5~6秒かけて息を吐きます。吐く時には、頭の中にある悩み事や嫌な気持ちを吐き出すようなイメージで行います。
③頰など口周りの筋肉で呼吸をしようとせず、鼻から吸って口から吐いて、しっかり腹式呼吸を行います。
④呼吸に慣れてきたら、へそ下約5センチにある丹田を意識し、そのあたりが温かくなる感覚を観察しながら呼吸に集中します。 頭に色々な悩み事や気になっている出来事が浮かんできても、放っておいて、丹田や心身の変化に意識を集中させることが大切です。
どんな時に呼吸法をすればいいの?
理想的な呼吸とは、安静時には安静時呼吸、強度の高い運動時などは努力性呼吸によって十分な酸素が身体中を巡っていることです。
ストレスを感じているな、体が強張っているな、寝つきが悪いななどと身体のSOSを感じたら、その都度行ってみましょう。
呼吸と自律神経には深い関わりがある
呼吸は酸素を身体に巡らすために重要な役割を持っています。そして、正しい呼吸ができていれば、自律神経のバランスもちょうどよく保たれているのです。正しい呼吸が自律神経にもたらす役割を考えてみました。
心を鎮めるため
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副交感神経は、食後やぬるめのお湯にゆっくりと入浴したり、寝てる間など夜間に活発になり、心を鎮め、身体を修復させると言われています。
毎日の生活の中でストレスや怒り、不安や焦りを感じることは少なくありません。そんな時、私たちの呼吸は浅く、速くなっています。ゆっくりと呼吸をする、特に長く息を吐くことは、これらの負の感情を改善するとされています。
また、副交感神経が優位に働くと、筋肉が柔軟になって血管が緩むため、体温が上がって血圧が下がります。深い呼吸をすることで副交感神経の働きが優位になるのです。
体の力を抜くため
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現代を生きる私たちに欠かせないスマホやパソコンのある生活。それらを使い続けることによって猫背など姿勢が悪い人が多くなりました。
また同じ姿勢を続けることによる体の硬化、またストレスなどによる過剰な緊張によって、呼吸をサポートする筋肉の機能が正しく使えていない人がが多いと言われています。
深い呼吸をすることにより、この固まった身体をほぐすこともできます。たまにはスマホから顔を上げ、姿勢を正して呼吸し、体の力を抜くことを心がけましょう。頭を上げるだけでも、滞った血の巡りがよくなり、すっきりとした気分になるのが分かると思います。
また、深い呼吸で横隔膜を大きく動かすことで、胃腸をはじめとする内臓が動いてマッサージされ、便秘の解消や血液の循環が良くなったりします。
質の良い睡眠を取るため
深呼吸は、リラックスさせるとともに血液循環をよくする効果があるので、寝る前に行うと良い眠りに導いてくれます。
リラックスすると副交感神経が優位になり、ぐっすりと眠ることができます。寝る前に仰向けになって横たわり、目を閉じて呼吸に意識を集中してみましょう。そのうちに雑念が消えていき、自然と睡眠に入ることができます。もし雑念が消えなくても心配しないでくださいね。そんな時はもう一度、ゆっくりと呼吸に意識を戻してみてください。良い睡眠は次の日の活力につながりますね。
交感神経と副交感神経のバランスを取るため
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ストレスによる緊張状態にある時、落ち着くために深呼吸が効果的であることはよく知られています。なぜなら深呼吸は自律神経のバランスを調整してくれるからです。
私たちは無意識のうちに自律神経のコントロールをしているわけですが、交感神経と副交感神経のバランスが乱れ、どちらか一方だけが優位な状態が長く続くと、倦怠感や不眠、動悸や頭痛、不整脈、食欲低下といったさまざまな不調が生じます。
この自律神経の交感神経と副交感神経をバランスをとることが健康のカギといえますが、そのためには、日頃からストレスや疲労を溜めない、昼夜逆転の生活をしないことなどに加えて、深呼吸をして意識してバランスを整えることも大切です。
呼吸法を変えて自律神経を整える方法
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自律神経を整える呼吸法を知ったところで、もう少し詳しく呼吸について考えてみましょう。私たちが普段している呼吸には、胸式呼吸と腹式呼吸があります。それぞれの役割について見ていきましょう。
胸式呼吸
胸で呼吸する呼吸法は「胸式呼吸」と言いますが、この「胸式呼吸」では「吸う息」に重点が置かれていて、「吐く息」より「吸う息」が長くなっています。
「吸う息」に重点を置いて、胸で呼吸すると、交感神経が刺激されます。交感神経が刺激されると、アドレナリンが分泌されて筋肉が緊張し、体も心も活発な状態になります。そのため、交感神経は「戦うための神経」とも言われているのです。
現代を生きる私たちの呼吸は、普段ほとんどが「胸式呼吸」だと言われています。ラジオ体操などで胸を開いて深呼吸と言われると、みんな肩を上げて息をしていたものでしたね。それが「胸式呼吸」なのです。
胸式呼吸は、肺を覆っている肋骨(ろっこつ)が広がり、肺の上の方に空気が入るイメージで肺が横へ膨らんで広がります。 胸式呼吸では自律神経の交感神経を優位にします。交感神経が優位になることで頭がすっきりとして、適度な緊張感を体に与えることができます。
エクササイズのためには、筋肉が動きやすくなる交感神経の効果が役立ちます。また、緊張を筋肉の負荷とすることもできます。 ただし胸式呼吸ばかりをしていると、肩や首に力が入り続けることになり、肩こりを招いてしまうこともあるので、腹式呼吸と胸式呼吸を交互に取り入れることが大切です。
腹式呼吸
「腹式呼吸」では「吸う息」より「吐く息」の方が長くなっています。
「吐く息」が長いと副交感神経が刺激されて、筋肉が緩み、体もこころもリラックスします。 腹式呼吸はもともとはリラックスするための呼吸法として使われてきました。東洋では、健康法でも修行でも、すべて、この「腹式呼吸」が基本になっています。ヨガでも、太極拳でも、気功でも、座禅でも、その中心は、みな「腹式呼吸」です。
胸で呼吸する「胸式呼吸」は、戦うための呼吸なので、心は外を向いて緊張しています。一方へその下の丹田で行う腹式呼吸では、心の内側を見つめ、下腹部にある丹田に意識を集中させる呼吸法です。
腹式呼吸をすると、肺の下にある横隔膜が下がります。この横隔膜は肺と胃の間に位置しています。息を吸うと横隔膜が下がり、肺の下方に空気が入ってお腹が膨らみます。 腹式呼吸は息を吸う時に肺を横に広げることはありません。
つまり、呼吸時に胸や肩の筋肉を使わないので、体が緊張することく息ができます。このため、副交感神経が優位になり、筋肉を和らげてリラックスさせてくれます。
呼吸法を変えて、自律神経を整えましょう
普段何気なく無意識のうちに行っている呼吸も自律神経と深い関わりがあることがわかりました。
パソコンやスマホなどを見続けている生活は、どうしても体を前傾姿勢にしてしまい、深い呼吸がしにくい状態になってしまいます。胸でする呼吸(胸式呼吸)ばかりでは、だんだんと体が緊張してしまいます。腹式呼吸と胸式呼吸をどちらも使って生活するのがベストなのですね。
また、当たりませすぎて考えていなかった、私たちの生活習慣が、知らないうちに自律神経を乱しているかもしれません。腸内環境を整えたり、軽い運動をすることも自律神経を整えるためには大切なことだったのです。
意識して呼吸を整えれば、体の中の巡りもよくなり、自律神経のバランスも整うことでしょう。浅い呼吸から深い呼吸へ。ストレスなどにさらされている人こそ、これから呼吸に注目して生活してみてください。